整数論
ここでは, 「クラスナーの補題」という定理とその応用を紹介します. 以下では次を仮定します. は 整域 は の商体で標数 に対して, は有限集合 は拡大次数 の有限次拡大 は の における整閉包 では早速定理を述べていきましょう. 定理 1.(Krasner's lemma) 上…
以前 のときに の類数が奇数になることを示しました. mathgara.hatenablog.com 今回は の場合を考えます. 方法は似たようなものです. 命題 1. を素数とする. このとき の類数 は偶数である. 証明 虚二次体の類数公式から を二次の指標とすると . なので であ…
ここでは を で割って 余る 以上の素数としたとき の類数などがどうなるか, またそこから何がわかるのかをまとめます. まずはそのために補題を示します. 補題 1. を素数で, とし, を の類数, を の二次指標とする. すなわちルジャンドル記号である. このとき…
ここでは L. Carlitz による類数 の代数体の特徴付けを紹介したいと思います. 定理 1.(L. Carlitz, 1960) を代数体, を の整数環, を の類数とする. このとき であることと, 任意の に対してある にのみ依存する自然数 が存在して, と既約元分解されることが…
ここでは二次体の整数環に関しての小ネタを紹介します. 早速本題に入りましょう. 命題 1. を自然数, を平方因子を持たない整数とし, を二次体とする. を割るすべての素数が で完全分解するとき, の整数環 のイデアル が存在して . 証明 と素因数分解し, を …
ここでは を整数, を奇素数として と の最大公約数を求めたいと思います. 少し具体例を見てみましょう. のとき: のとき のとき のとき のとき のとき のとき のとき のとき: のとき のとき のとき のとき のとき のとき のとき 少しだけですがなにやら 「 …
ここではオイラーの 関数と の乗法群の生成元の割合について簡単にまとめたいと思います. オイラーの 関数は素朴な定義なのに整数論では頻繁に出てくる大事な関数だと思います. ではまずは定義からです. 定義 1. に対して, のなかで と互いに素なものの個数…
ここでは, おそらく多くの人も気付いているかもしれない合成数の素因数に関する性質を紹介します. 命題 1. を合成数とする. このとき は なる素因数 をもつ. 証明 が合成数なので と整数の積で書ける. ただしこのとき < < としていい. このとき である. なぜ…
ここでは, なんか僕が初めて出会ったときに, 言われてみれば当たり前だけど面白いなあと感じた素数についての簡単な不等式を紹介します. 命題 1. を 番目の素数とするとき 証明 は と互いに素である. よって 以上の素数の倍数であるので不等式が成立する. 何…
今回は 進数の積公式についてまとめたいと思います. 命題 1. 任意の有理数 に対して, が成り立つ. ただし, はすべての素数と をわたるとする. 証明 の素因数分解 を考え, また の符号は であることから なので主張が成り立つ. (終) すこし例を見てみましょう…
ここでは「 環でない 次元ネーター整域」の例を挙げたいと思います. 環の定義をまずは確認します. 定義 1. 次元ネーター整閉整域を 環 という. よって整閉性を外せばいいです. 代数体の整数環はかならず 環になることが知られていますが, 整数環の部分環でい…
演習 を奇素数とする. このとき の分子は の倍数である. 解答例 より なので である. は全単射. よって mod で を考えると よって の分子は の倍数である. (終) 何か間違いなどあれば教えてください
演習 を素数, とする. このとき は mod の原始根, すなわち の生成元であることを示せ. 解答例 まず仮定の等式から が明らかにわかるので, は奇素数である. より, の位数の候補は である. いま明らかに > であるので はあり得ない. もし位数が であるとする…
「その1」の具体例で二次体での素数の分解を紹介しました. mathgara.hatenablog.com 今回はこの話をより詳しく見ていこうと思います. を平方因子を持たない整数, を二次体とします. 特に, > のとき 実二次体 < のとき 虚二次体 といいます. また の整数環は…
ここでは, 代数体の拡大において, ある条件の下でそれぞれの類数に約数・倍数の関係がうまれることを紹介します. 命題 1. を Galois群が Abel 群になるような非自明な不分岐部分拡大 をもたない代数体の拡大と仮定する. このとき, の類数 は の類数 を割る. …
早速本題に入りましょう. 命題 を定数でない多項式とする. このとき は無限集合. 証明 が有限集合 と仮定する. となる整数 をとる. このとき ある多項式 が存在して となる. 特に, は任意の整数 に対して で割り切れる. 今 とおく. このとき も定数ではなく,…
ここでは Hilbert の分岐理論を用いて, "代数体の有限次拡大 が巡回拡大でない Galois 拡大ならば, で分解しない のイデアルは高々有限個" という事実を示します. まずは今回出てくる言葉の定義や定理をまとめます. 定義 1. 代数体の有限次 Galois 拡大 に対…
Hilbert の分岐理論という面白い話があるのですが, 一回では説明しきれないので何回かに分けて, 大体ノイキルヒの1章の8~10節あたりの話を簡単に証明などは省いてまとめていきたいと思います. 今回は8節あたりとその具体例をまとめたいと思います. 定…
代数的整数論には 任意の代数体のイデアル類群は有限群である という大事な定理があります. 今回はこの定理を用いて"任意の代数体 に対して, ある の有限次拡大体 が存在して, の任意のイデアルが において単項イデアルになる" ということを示します. (ノイ…
ここでは複素解析でよく知られた「一致の定理」の 版を紹介します. そもそも とは何かというと, 素数 に対して 進数体 があり, これの代数閉包 を考えるのですが, これは完備でないので完備化したものが です. ちょうど と のような関係です. 定理に入る前に…
整数論の本を読んでいて証明が面白いなと思った定理があったので紹介します. Kroneckerの定理とも呼ばれているらしいです.(もしかしたら間違いかもしれないです) では主張を述べて証明していきたいと思います. 定理 をすべての共役の絶対値が である代数的整…
ここでは Dedekind 整域の でないイデアルは 元生成である ということを示したいと思います. この命題を示すために, 次の定理を用います. 定理 1. Dedekind 整域の でない任意のイデアルは素イデアルの積として一意的に表される. また次の補題も使うので示し…