A ⊂ B かつ A と B の間に全単射があるなら A=B か?
今回は
かつ と の間に全単射が存在するなら か?
を考えます.
以下では, 集合 に対して で の濃度(元の個数)を表すとします.
まず, 有限集合においては次が成り立ちます.
命題 1. を有限集合とし, とする. このとき, と の間に全単射が存在するならば である.
証明 まず なので
が成り立つ. また, と の間に全単射, 特に全射が存在するので
となる. よって となる. (終)
よって有限集合の場合は今回のテーマの命題は成り立つのですが, 無限集合になると反例が出てきます.
反例 2. を整数全体の集合, を偶数全体の集合とする. このとき, かつ全単射
が存在するが, である.
では, 考えている対象が群や環, 体などならどうなるでしょう.
とはいっても上の反例はアーベル群 とその間の群の同型 という見方もできるので反例になっています.
環においては, 例えば次のような反例があります.
反例 3. を実数係数多項式環とする. このとき, は の真の部分環であり, 同型
が存在するが,
体においても同じような反例が作れますが, 有限集合のときと同様に, 有限体のときはテーマの命題が成り立ちます.
また機会があれば, 他の対象についても同様のことを考えてみたいと思います.
今回はこれで終わります.
何か間違いなどがあれば教えてください.
【参考文献】