ガランガラのブログ

数学や好きな音楽について書くことが多いです。

環論

自身を除く全てのイデアルが素イデアルになる単位元をもつ可換環は体

ここでは、自身を除く全てのイデアルが素イデアルになる単位元をもつ可換環は体であることを示します. なお、これは多元数理の博士後期課程の2022年度の問題で見かけました. https://www.math.nagoya-u.ac.jp/ja/admission/gs/download/exam-dc-2022s.pdf 命…

A ⊂ B かつ A と B の間に全単射があるなら A=B か?

今回は かつ と の間に全単射が存在するなら か? を考えます. 以下では, 集合 に対して で の濃度(元の個数)を表すとします. まず, 有限集合においては次が成り立ちます. 命題 1. を有限集合とし, とする. このとき, と の間に全単射が存在するならば であ…

すべての既約元が素元になるがUFDでない例

ここでは「すべての既約元が素元になるがUFDでない例」を紹介したいと思います. 代数学の教科書ではよく次の命題が載っています. 命題 1. 可換環 が ならば, のすべての既約元は素元になる. 今回はこの命題の逆の反例を考えるということです. 実は次のような…

A → S^-1A が単射でない例

ここでは, 可換環 とその積閉集合 に対して次の環準同型写像 が単射でない例を紹介したいと思います. 僕はこれをアティマクではじめて読んだときとても戸惑ったのを覚えています. なんで?ってなりますよね. ということで少しずつ考えていきます. まず, 環準…

イデアルの和と積の定義

ここではイデアルの和と積の定義についてまとめたいと思います. 基本的なことではあるのですが, わりと最初は定義を勘違いしやすいと思うので読んでみてください. まずはイデアルの定義を確認しましょう. なおここでは環といったら可換環のことを意味するこ…

自由加群の自由加群でない部分加群

ここでは自由加群の自由加群でない部分加群の例を簡単に挙げます. ちなみに一般的に 上の自由加群の部分加群は自由加群である という事実があります. なので環としては でないものを用意して考えてみました. 命題 とすると, は の自由加群でない部分加群であ…

整拡大における極大イデアル

今回は整拡大における極大イデアルの性質を紹介します. 補題 1. を整域かつ整拡大とする. このとき が体である が体である. 証明 [ について] とする. このとき最小次数をもつ整従属関係式を とする. このとき最小次数で が整域なので である. よって となり…

整従属性が剰余環や商環に遺伝する

ここでは、整従属性が剰余環や商環に移っても保存されることを紹介します. 一応整従属について定義を確認します. 定義 1. を環の拡大とする. このとき はある 係数のモニック多項式の根であるとき 上整という. の任意の元が 上整であるとき が 上整という. …

有理整数環の自己同型

ここでは有理整数環 の自己同型を決定します. といっても簡単です. を の自己同型とすると, が もしくは で生成されるので となりますが, 環準同型写像は を にうつすので となり, となります. 何か間違いなどあれば教えてください. [参考文献] 代数学2 環と…

ベキ零でないベキ零元根基

ここでは「ベキ零でないベキ零元根基」の例を挙げたいと思います. 一般にネーター環のベキ零元根基はベキ零になるので、ネーター環でない環で考えないといけないということになります. パッと思いついたネーター環でない環は とかですかね. では紹介します. …

B-Aが乗法的に閉じているときAは整閉

問題 環の拡大 について, が乗法的に閉じているとき は整閉であることを示せ. 解答例 が 上整とすると となる自然数 と が存在する. このとき のとり方から であり, またそのような で最小なものとしてとることにする.ここで とおくと, の最小性から である.…

ブール環の素イデアルについて

ブール環の本当に簡単な性質をまとめます. まずは定義を述べましょう. 定義 1. 環 はすべての に対して をみたすとき ブール環 という. 命題 2. ブール環 について次が成立する. すべての に対して, すべての素イデアル は極大イデアルであり, はハウスドル…

環の拡大と素イデアル

命題 1. を環の拡大とし, を の素イデアルとする. このとき, が素イデアルならば も素イデアルである. 証明 より素イデアルの逆像は素イデアルなのでOK. (終)

Dedekind環でない1次元ネーター整域

ここでは「 環でない 次元ネーター整域」の例を挙げたいと思います. 環の定義をまずは確認します. 定義 1. 次元ネーター整閉整域を 環 という. よって整閉性を外せばいいです. 代数体の整数環はかならず 環になることが知られていますが, 整数環の部分環でい…

A上整な単元

今回は を環の拡大として, が 上整としたとき, が において単元なら において単元であることを示します. まずは少し定義を述べます. 定義 1. を環の拡大とする. が 上整とは, がある 係数モニック多項式の根になることである. の任意の元が 上整なら が 上整…

有限整域は体

命題 有限整域は体である. 証明 を有限整域とする. をとる. このとき は有限集合より, ある自然数 > が存在して, であり, よって, となる. は整域で, なので より の乗法逆元は となり は体である. (終) 何か間違いなどあれば教えてください.

多項式環の単元

ここでは多項式環の単元を決定したいと思います. この際次の事実を使います. (もちろん使わなくてもいいですが使うと記述が明快になると思います) 命題 1. を環とする. このとき を環 のベキ零元全体の集合とするとこれはイデアルであり, の全ての素イデアル…

Dedekind整域の (0) でないイデアルは2元生成である

ここでは Dedekind 整域の でないイデアルは 元生成である ということを示したいと思います. この命題を示すために, 次の定理を用います. 定理 1. Dedekind 整域の でない任意のイデアルは素イデアルの積として一意的に表される. また次の補題も使うので示し…

n+1個以上の異なる解をもつn次方程式

今回は「 個以上の異なる解をもつ 次方程式」について考えてみます. とはいっても, 僕が大学で代数学をやるまでは「 次方程式は高々 個の解をもつ」と理解していましたし, 高校でも出てくる主張なので決して大間違いというわけではないです. でも大学などで…