初学者向け群論解説 その16 ~準同型定理その2(第二同型定理・第三同型定理)~
前回は準同型定理その1ということで, 準同型定理(第一同型定理)についてまとめました.
今回は続いて第二同型定理, 第三同型定理についてまとめたいと思います.
定義 1. 群 の部分群 に対して
とおく.
Remark. 上の は一般には部分群にならない. なぜなら の逆元は となるが, これが という形に直せるかがわからないからである. しかし, 次に見るようにどちらかが の正規部分群になるときは部分群になる.
補題 2. を群 の部分群とし, とする. このとき は の部分群であり となる.
証明
(i) 単位元の存在: より よりOK.
(ii) 積に関して閉じていること: をとる. このとき, が正規部分群より が成り立つので
よりOK.
(iii) 逆元に関して閉じていること: を任意にとる. このとき
よりOK.
以上より は の部分群である.
については, 任意の について が成り立つのでOK. (終)
では第二同型定理を見てみましょう.
定理 3.(第二同型定理) を群 の部分群とし, とする. このとき
.
証明 次の自然な準同型写像
を考える. これは全射である. なぜなら任意の の元は という形にかけるからである. となることを示す.
に対して
よりOK. (もともと なので がわかれば である)
よって準同型定理より . (終)
第二同型定理は次のようにイメージすればいいと思います.
また, なぜ でなく になっているかというと, そもそも が を含んでいるかがわからないからです. を念頭に
- の部分を を含むように に大きくして で割ったものが
- の部分を に含まれるように に小さくしてこれで割ったものが
と考えると, どちらも っぽいものなので同型になるのも自然に思えるのではないでしょうか.
もちろん の状況ではどちらも になります.
では次は第三同型定理についてです.
定理 4.(第三同型定理). を群, をともに の正規部分群とする. このとき
.
証明
は である. 実際 とすると より であるから となる. この写像が全射準同型になることも明らかである. に対して
なので より準同型定理より. (終)
これは分数の計算みたいですね.
今回はこれで終わります.
何か間違いなどがあれば教えてください.
[参考文献]