ガランガラのブログ

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Dedekind環でない1次元ネーター整域

ここでは {\rm Dedekind} 環でない  1 次元ネーター整域」の例を挙げたいと思います.  {\rm Dedekind} 環の定義をまずは確認します.

 

定義 1.  1 次元ネーター整閉整域を  {\rm Dedekind} 環 という.

 

よって整閉性を外せばいいです. 代数体の整数環はかならず {\rm Dedekind} 環になることが知られていますが, 整数環の部分環でいい感じのものを取れば整閉性だけ満たさないようにできます.

命題 2.  \mathbb{Z} [ \sqrt{5} ] 1 次元ネーター整域である.

証明 整域であることは, これが  \mathbb{Q}(\sqrt{5}) の部分環より明らか. ネーター性は

 \mathbb{Z} [ \sqrt{5} ] \cong \mathbb{Z} [ x ]/(x^2-5)

であり, ネーター環の剰余環もネーター環なのでOK.

あとは  0 でない任意の素イデアルが極大イデアルになることを示せばいい.

 \mathfrak{P} を任意の  0 でない素イデアルとする. 包含準同型

 \iota : \mathbb{Z} \to \mathbb{Z} [ \sqrt{5} ]

を考える. 素イデアルの準同型による逆像もまた素イデアルよりある素数  p を用いて

 \iota^{-1}(\mathfrak{P})=\mathbb{Z} \cap \mathfrak{P}=p \mathbb{Z}

となる. すると 

 \iota' : \mathbb{Z}/p \mathbb{Z}  \hookrightarrow \mathbb{Z} [ \sqrt{5} ]/ \mathfrak{P}

という環の拡大が起こる. もし  \mathfrak{P} が極大イデアルでないとすると  \mathfrak{m}/ \mathfrak{P} という極大イデアルが存在して,  \iota'^{-1}(\mathfrak{m}/\mathfrak{P}) \mathbb{Z}/p \mathbb{Z} 0 でない素イデアルとなるがこれは明らかに矛盾. 

整閉でないことは  \dfrac{1+\sqrt{5}}{2} \mathbb{Z} 上整であり,  \mathbb{Z} [ \sqrt{5} ] に入らないことからわかる. (終)

 

何か間違いなどあれば教えてください

 

[参考文献]