初学者向け群論解説 その18 ~群の作用の定義と例~
ここでは, 群の作用を定義し, いくつか具体例を見ていきたいと思います.
定義 1.(群の作用) を群, を集合とする. このとき, 群 の集合 への左作用とは, 写像
で, 次の を満たすもののことである:
注意. 上の条件 は
「 を作用させたものにさらに を作用させたもの」と「 を作用させたもの」が等しい
ということである.
注意. の への左作用には, のかわりに と書くこともある.
例.1.1(自明な作用) を群, を集合としたとき
は明らかに左作用である. これを の への自明な作用という. 右作用の場合も同様である.
例.1.2 を 次対称群 とする. このとき, 写像
は左作用となる. 実際, (恒等写像) は 左作用の条件 を満たし, 条件 は, に対して
が置換の積の定義であることから満たす.
最後に, 一つ命題を紹介する.
命題 2. 群 が集合 に左から作用しているとする. このとき, 任意の に対して, から定まる写像
は全単射である.
証明 任意の に対して
は の逆写像である. 実際, 任意の に対して
であり, 同様に
となるので
よって
である. よって は全単射. (終)
今回はこれで終わります.
何か間違いなどがあれば教えてください.
【参考文献】