ガランガラのブログ

数学や好きな音楽について書くことが多いです。

初学者向け

初学者向け群論解説 その19 ~置換表現~

前回は群の作用の定義などをまとめました. mathgara.hatenablog.com 今回は 置換表現 といわれる群の作用の一種を扱います. 意外と院試などで使うテクニックでもあるのでぜひ目を通してみてください. を群, とする. が に左から作用するとき, に対して なの…

A ⊂ B かつ A と B の間に全単射があるなら A=B か?

今回は かつ と の間に全単射が存在するなら か? を考えます. 以下では, 集合 に対して で の濃度(元の個数)を表すとします. まず, 有限集合においては次が成り立ちます. 命題 1. を有限集合とし, とする. このとき, と の間に全単射が存在するならば であ…

初学者向け群論解説 その18 ~群の作用の定義と例~

ここでは, 群の作用を定義し, いくつか具体例を見ていきたいと思います. 定義 1.(群の作用) を群, を集合とする. このとき, 群 の集合 への左作用とは, 写像 で, 次の を満たすもののことである: 注意. 上の条件 は 「 を作用させたものにさらに を作用させ…

f ∘ f = f となる群準同型 f : G → G について

問題.(Selected Exercises in Algebra. 140) を群とし, を となる群準同型とする. このとき以下を示せ. 解答例. を任意にとる. なので また, より ある が存在して 仮定より なので よって となる. は明らかなので逆方向の包含を示す. を任意にとる. このと…

初学者向け群論解説 その17 ~準同型定理その3(準同型の分解)~

前回は第二同型定理, 第三同型定理についてまとめました. mathgara.hatenablog.com 今回は準同型の分解についてまとめます. 定理 1.(準同型の分解) を群とし, を準同型とする. さらに を正規部分群とし, を自然な全射準同型とする. このとき下図が可換図式と…

初学者向け群論解説 その16 ~準同型定理その2(第二同型定理・第三同型定理)~

前回は準同型定理その1ということで, 準同型定理(第一同型定理)についてまとめました. mathgara.hatenablog.com 今回は続いて第二同型定理, 第三同型定理についてまとめたいと思います. 定義 1. 群 の部分群 に対して とおく. Remark. 上の は一般には部分…

初学者向け群論解説 その15 ~準同型定理その1~

前回は正規部分群と剰余群についてました. mathgara.hatenablog.com 今回はついに準同型定理についてまとめます. まずはその中でも基本的な「第一同型定理」についてです. 代数をする上で絶対に欠かすことができない重要な定理ですので, できればあいまいな…

群の任意の元の位数が2以下ならアーベル群である

今回は群の任意の元の位数が 以下ならアーベル群であることを示します. 命題 1. 群 について任意の に対して のとき, はアーベル群. 証明 を任意にとったとき であることをいいたい. より ここで より , についても同様なので よりOK. (終) 今回はこれで終わ…

初学者向け群論解説 その14~正規部分群と剰余群~

今回は正規部分群とそこから得られる剰余群についてまとめてみます. まずは正規部分群のとき, 左剰余類と右剰余類が一致することをみてみましょう. 補題 1. が群 の正規部分群で なら, となる. 証明 を任意にとる. このとき が の正規部分群なので であるか…

初学者向け群論解説 その13 ~正規部分群の定義と例~

前回はラグランジュの定理など有限群やその剰余類の位数についてまとめました. mathgara.hatenablog.com 今回は群論においてとても大事で基本的な正規部分群の定義と例についてまとめたいと思います. 以前まで、群 とその部分群 に対して という剰余類の集合…

A → S^-1A が単射でない例

ここでは, 可換環 とその積閉集合 に対して次の環準同型写像 が単射でない例を紹介したいと思います. 僕はこれをアティマクではじめて読んだときとても戸惑ったのを覚えています. なんで?ってなりますよね. ということで少しずつ考えていきます. まず, 環準…

イデアルの和と積の定義

ここではイデアルの和と積の定義についてまとめたいと思います. 基本的なことではあるのですが, わりと最初は定義を勘違いしやすいと思うので読んでみてください. まずはイデアルの定義を確認しましょう. なおここでは環といったら可換環のことを意味するこ…

初学者向け群論解説 その12 ~群や剰余類の位数について~

前回は商と剰余類の例についてまとめてみました. mathgara.hatenablog.com 今回はラグランジュの定理など, 位数についての話題をまとめてみたいと思います. とはいっても, 群の位数の話題はたくさんあって僕も知らないことがまだまだあると思いますが, ここ…

初学者向け群論解説 その11 ~商と剰余類の例~

前回は同値関係と同値類についてまとめました. mathgara.hatenablog.com 今回は引き続き同値関係により定まる商や剰余類についてみていきたいと思います. 定義 1. を 上の同値関係とする. を の同値関係 による商という. 写像 を自然な写像という. に対して,…

初学者向け群論解説 その10 ~同値関係と同値類~

今回は同値関係と剰余類についてまとめようと思います. 同値関係や剰余類の考え方は代数学だけでなくほかの分野でもよく出てくるので, はじめはなじめないかもしれないですが, しっかり腑に落ちるまで時間をかけて慣れていってください. 定義 1.(二項関係) …

初学者向け群論解説 その9~『well-defined』について~

ここでは, 数学においてしばしば気にする機会が多い "" という考え方についてまとめたいと思います. 僕も初めて学んだ時は腑に落ちるまで時間がかかったのですが, ここではなるべく具体例なども挙げながらまとめていきたいと思います. さっそく次の定義を見…

初学者向け群論解説 その8~準同型写像の性質~

前回は準同型写像の定義と具体例をまとめました. mathgara.hatenablog.com 今回は準同型写像の性質についてまとめていきます. はじめにまず次の二つの重要な部分群を定義します. 定義 1.(核と像) を群, を準同型とする. このとき を の核という. (カーネルと…

指数2の部分群は正規部分群

今回は「指数 の部分群は正規部分群である」ことを示します. 群論の序盤のほうで演習などで出される印象が強いよくある問題です. 命題 1. を群, を指数 の部分加群とする. このとき は正規部分群である. 証明 が指数 なので と直和でかける. に対して, なら …

初学者向け群論解説 その7 ~準同型写像の定義と具体例~

さて今回は「準同型写像の定義と具体例」についてまとめたいと思います.いよいよ本当に群論って感じの話になってきたかなと思います. ではさっそく定義を見てみましょう. 定義 1.(準同型写像など) を群, を写像とする. が準同型写像, もしくは準同型であると…

初学者向け群論解説 その6 ~元の位数~

ここでは「群の元の位数」についてまとめたいと思います. 一応前回の記事を載せておきます. mathgara.hatenablog.com 位数というと群に対してその元の個数も位数といっていました. 少しややこしいかもしれませんが混乱しないように気を付けてください. さっ…

初学者向け群論解説 その5 ~巡回群~

ここでは巡回群についてまとめたいと思います. 前回 「部分集合が生成する部分群」 というものをまとめました. 今回する巡回群の定義に必要になるので載せておきます. mathgara.hatenablog.com では早速定義から入りましょう. 定義 1.(巡回群) 群 が 巡回群 …

初学者向け群論解説 その4 ~部分集合が生成する部分群~

前回は部分群についてまとめてみました. mathgara.hatenablog.com 今回は群の部分集合が生成する部分群について簡単にまとめたいと思います. 最初はややこしく感じるかもしれませんが "生成する" という概念数学ではよく出てくる操作ですので, そのイメージ…

初学者向け群論解説 その3 ~部分群について~

ここでは部分群の定義, 判定法などをまとめていきたいと思います. 早速定義から見ていきましょう. 定義 1.(部分群) を群とする. が の演算によって群になるとき, を の部分群という. 例を見る前に, 群の部分集合が部分群になっているかを判定する方法を紹介…

初学者向け群論解説 その2 ~群に関する基本的な性質~

前回の話 mathgara.hatenablog.com ここでは群の定義だけから示すことができる, 群に関しての一般的な性質をまとめてみたいと思います. 群の定義を思い出しておきましょう. 定義 1. (群) 集合 と 上の二項演算 の組 が 群である とは, 次の の条件を満たすこ…

初学者向け群論解説 その1 ~群の定義と例~

ここでは群の定義と例をまとめたいと思います. 定義 1. (二項演算) を集合とする. このとき, 集合 上で定義される二項演算とは, 写像 のことである. この定義だけ見てもイメージがわかないかもしれないですが, 簡単に言うと, つの元を使って つの元を定める…

(固定)初学者向け群論解説 その0 ~群論を始める準備~

群論をこれから学んでいく, いきたいと思っている人の多少の助けになりそうなことをまとめていきたいと思います. 設定(想定対象者や到達目標など) 想定対象者は 数学科系の学生ではじめて群論を学ぶ, もしくは講義があったがよくわからなかった人 です. 僕自…

相対位相

今回は, 今では「定義通り考えればいいやん」って思うんですが, 当時初めて勉強した時はなんやかんや理解するのに時間がかかった"相対位相"について, 過去の初学者だった自分に伝えるような感じでまとめたいと思います. より具体的には Euclid 空間 の部分集…