ガランガラのブログ

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類数の有限性の応用

代数的整数論には

任意の代数体のイデアル類群は有限群である

という大事な定理があります. 今回はこの定理を用いて"任意の代数体  K に対して, ある  K の有限次拡大体  L が存在して,  K の任意のイデアル L において単項イデアルになる" ということを示します. (ノイキルヒの1章6節の練習7(ほぼ6)です)

 

命題 任意の代数体  K に対して, ある  K の有限次拡大体  L が存在して,  K の任意のイデアル L において単項イデアルになる.

 

証明  Kイデアル類群を  Cl_{K} , 類数を  n

 Cl_{K}=\{[\mathfrak{a}_1], \ldots, [\mathfrak{a}_n] \} (ただし各  \mathfrak{a}_i は整イデアル)

とする. このとき, 各  [\mathfrak{a}_i] の位数を  m_i とおくと, 各  \mathfrak{a}_i に対してある  \alpha_i \in \mathcal{O}_{K} が存在して,  \mathfrak{a}_{i}^{m_i}=(\alpha_i) となる. ここで

 L=K(\sqrt[m_1]{\alpha_1}, \cdots, \sqrt[m_n]{\alpha_n})

とおくと, これが求める体であることを示す. まず各  i について (\mathfrak{a}_{i} \mathcal{O}_{L})^{m_i}= (\alpha_i) より  \mathfrak{a}_{i} \mathcal{O}_{L}= (\sqrt[m_i]{\alpha_i}) L において単項イデアルになる. さて 整イデアル  \mathfrak{b} [\mathfrak{b}]=[\mathfrak{a}_i] となるとき,  \mathfrak{b} L において単項イデアルになることを示せば命題の証明が完了する. このときある  x, y \in \mathcal{O}_{K} が存在して  x\mathfrak{b}=y\mathfrak{a}_i となる. このとき両辺  m_i 乗すると  x^{m_i} \mathfrak{b}^{m_i}=y^{m_i} \mathfrak{a}_{i}^{m_i}=(y^{m_i} \alpha_i) であり,   x \mathfrak{b} \mathcal{O}_{L}=y \sqrt[m_i]{\alpha_i} \mathcal{O}_{L} となるので  \mathfrak{b} \mathcal{O}_{L}=(x^{-1} y \sqrt[m_i]{\alpha_i}) というように  L において単項イデアルになる. (終)

 

  K=\mathbb{Q}(\sqrt{-5}) とすると,  Cl_{K}=\{[(1)], [(2,1+\sqrt{-5})]\} であることはよく知られています. このとき  (2, 1+\sqrt{-5})^2=(2) より  L=K(\sqrt{2})=\mathbb{Q}(\sqrt{-5}, \sqrt{2}) とすればいい. 

 

ちなみに類体論において単項化定理という" K のHIlbert 類体においてすべての  Kイデアルは単項イデアルになる" という定理があります. この例の  K に対する Hilbert 類体  H_{K} H_{K}=\mathbb{Q}(\sqrt{-5}, \sqrt{-1}) となることが知られています. どちらの拡大においても  K の全てのイデアルは単項化されますが,  L \not= H_{K} となっています.  これは  L/K が不分岐拡大でないことを意味しています. (Hilbert 類体の定義が「基礎体の最大不分岐 Abel 拡大」であり,  L/K はAbel 拡大にはなっているから)

 

何か間違いなどあれば教えてください.

 

[参考文献]