ガランガラのブログ

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類数2の代数体の特徴付け

ここでは L. Carlitz による類数  2 の代数体の特徴付けを紹介したいと思います.

 

定理 1.(L. Carlitz, 1960)  K を代数体,  \mathcal{O} K の整数環,   h K の類数とする. このとき  h \leq 2 であることと, 任意の  \alpha \in \mathcal{O} に対してある  \alpha にのみ依存する自然数  k が存在して,

 \alpha = \pi_1 \pi_2 \cdots \pi_k

と既約元分解されることが同値である.

証明 まず  h=1 であることと  \mathcal{O} が 一意分解整域であることが同値であるのはよく知られたことである.

 h=2 とし,  \alpha \in \mathcal{O}

 (\alpha) = \mathfrak{p}_1 \cdots \mathfrak{p}_s \mathfrak{r}_1 \cdots \mathfrak{r}_t

と素イデアル分解する. ただし各  \mathfrak{p}_i は単項イデアル \mathfrak{r}_i は単項イデアルでないとしておく. このとき

 \mathfrak{p}_i = (\pi_i)\ (i=1, \cdots, s)

となる. 

また  h=2 なので

 \mathfrak{r}_i \mathfrak{r}_j = (\rho_{i, j})\ (i, j=1, \cdots, t)

となる. このとき  \rho_{i, j} は既約元である. なぜならもし  \rho_{i, j} が既約でないとしてある既約元  x の倍元とすると

 (x) \supsetneq (\rho_{i, j}) = \mathfrak{r}_i \mathfrak{r}_j

より素イデアル分解の一意性から

 (x) = \mathfrak{r}_i または  (x) = \mathfrak{r}_j

となり矛盾する.

さらに  t は偶数でなければならない. なぜならもし  t が奇数なら

 \mathfrak{r}_{t} = (\alpha \pi_{1}^{-1} \cdots \pi_{s}^{-1} \rho_{1, 2}^{-1} \cdots \rho_{t-2, t-1}^{-1})

となり  \mathfrak{r}_t が単項イデアルでないことに矛盾する. よって  t=2u とおく.

すると素イデアル分解からある単数  \varepsilon が存在して

 \alpha = \varepsilon \pi_1 \cdots \pi_s \rho_{1, 2} \cdots \rho_{t-1, t}

となり, ちょうど  s+u 個の既約元を含み, この  s, u \alpha のみに依存する自然数である.

次に,  h \geq 3 のときに既約元分解に現れる既約元の個数が一定でないことを示す.

 Case. 1 位数  m \geq 3イデアル A が存在する場合:  \mathfrak{p} \in A, \mathfrak{p}' \in A^{-1} をそれぞれ素イデアルとする. このとき

 \mathfrak{p}^m = (\pi), \mathfrak{p'}^m = (\pi'), \mathfrak{p} \mathfrak{p'} = (\pi_1)

となり,   \pi, \pi', \pi_1 は互いに素である. するとある単数  \varepsilon が存在して

 \pi_{1}^m = \varepsilon \pi \pi'

となり, この場合既約元分解に現れる既約元の個数が固定された整数環の元に対して一定でない.

 Case. 2 位数  2 の異なるイデアル A_1, A_2 A_3 = A_1 A_2 が単項でないようなものが存在する場合:

それぞれの類から素イデアル  \mathfrak{p}_i \in A_i,\ (i=1, 2, 3) をとると

 \mathfrak{p}_{i}^2 = (\pi_i)\ (i=1, 2, 3),\ \mathfrak{p}_1 \mathfrak{p}_2 \mathfrak{p}_3 = (\pi)

となり,  pi_1, \pi_2, \pi_3, \pi は互いに素. ここからある単数  \varepsilon が存在して

 \pi^2 = \varepsilon \pi_1 \pi_2 \pi_3

となり, この場合も既約元分解に現れる既約元の個数が固定された整数環の元に対して一定でない.

以上より h \geq 3 のときに既約元分解に現れる既約元の個数が一定でない. (終)

 

何か間違いなどあれば教えてください.

 

[追記]

  • 6/1  通りすがりさんのコメントを受けてところどころ訂正しました. コメントありがとうございました.

 

[参考文献]

 Carlitz, L. characterization of algebraic number fields with class number two. Proc. Amer. Math. Soc. 11 (1960), 391–392. (Reviewer: T. M. Apostol) 12.00