初学者向け群論解説 その15 ~準同型定理その1~
前回は正規部分群と剰余群についてました.
今回はついに準同型定理についてまとめます. まずはその中でも基本的な「第一同型定理」についてです. 代数をする上で絶対に欠かすことができない重要な定理ですので, できればあいまいな理解ではなく, 腑に落ちるまで考えていただければと思います. もちろん今後も出てくるのでその都度慣れるというのでもいいと思います.
では早速やっていきましょう.
定理 1.(準同型定理 (第一同型定理)) を群とし, を準同型写像とする. また を自然な準同型とする. このとき, 準同型写像 で となるものがただ一つ存在する. (下の図式が可換図式となる) また, この は から への同型写像となる.
\begin{xy} \xymatrix{ G \ar[r]^{\phi} \ar[d]_{\pi} & H \\ G/{\textrm{Ker}(\phi)} \ar@{.>}[ur]_{\exists! \psi} } \end{xy}
証明 とおく. さて, は を に送る準同型です. なので, となるようにするには
とするしかありません. さて, これが であること, そしてちゃんと群準同型写像になることを示す必要があります.
であること: これは何を示さないといけないかというと, の元 というのは で代表されていますが, 別の元 によっても代表される, すなわち となる可能性があります. なので が であることを示すには
を示さなければなりません. 要するに一見違う表し方の等しい元の行き先が等しくなることを示すということです. では示しましょう. ということはある の元を用いて と表せます. すると
となり示せました. よって は です.
が準同型写像となること: に対して
となるので準同型写像になることも示せました. という条件をみたす 準同型 の一意性は定義の仕方が一通りになるので明らかです.
さて, 後半の主張 「この は から への同型写像となる. 」も示していきましょう. 準同型写像になることは示したので, 全単射であることをいえばいいです.
全射であること: の元は像の定義からある を用いて とかけます. すると
なので全射になることがわかります.
単射になること: を示せばいいです.
なので単射もわかります. よって以上より は から への同型写像となります. (終)
準同型写像のポイントをまとめると, もともとの準同型写像 を
だと考えています. ここまですればそりゃあ同型になるだろうという, ものすごい無理やり感を感じます.
今回はこれで終わります.
何か間違いなどがあれば教えてください.
[参考文献]