ガランガラのブログ

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Cp における一致の定理

ここでは複素解析でよく知られた「一致の定理」の  \mathbb{C}_p 版を紹介します.

そもそも  \mathbb{C}_p とは何かというと, 素数  p に対して  p 進数体  \mathbb{Q}_p があり, これの代数閉包  \overline{\mathbb{Q}_p} を考えるのですが, これは完備でないので完備化したものが  \mathbb{C}_p です. ちょうど  \mathbb{R} \mathbb{C} のような関係です. 定理に入る前にいくつか用語を定義します.

 

定義 1.  f(s) \mathbb{C}_p 内の領域  \mathfrak{D} 上の関数とする. 任意の  \alpha \in \mathfrak{D} に対し, 近傍  \mathfrak{D_{\alpha}} がとれ,  \alpha を除く任意の  s \in \mathfrak{D_{\alpha}} に対して収束するローラン級数

 \displaystyle f(s)=\sum_{n=k}^{\infty} a_n(s-\alpha)^n, (k \in \mathbb{Z}, a_n \in \mathbb{C}_p)

で表せるとき,  f p 進有理型関数という.

また, このとき  k \geq 0 でとれるとき,  f \alpha において  p 進正則(または  p 進解析的)であるという.

 

複素解析での一致の定理とは正則関数が集積点をもつ集合上で定まるというものですが, これが  p 進でも成り立つというのが今回の内容です.

 

定理 2. ( \mathbb{C}_p における一致の定理)   \mathbb{C}_p 内の領域  \mathfrak{D} 上正則な関数  f の零点集合が  \mathfrak{D} 内に集積点  \alpha をもつとする. このとき  f は恒等的に  0 である.

 

証明  f が恒等的に  0 というわけではないとして矛盾を導く. このとき  \alpha の近傍  \mathfrak{D_{\alpha}} \subset \mathfrak{D} において

 \displaystyle f(s)=\sum_{n=k}^{\infty} a_n(s-\alpha)^n=(s-\alpha)^kg(s), ( k は正の整数,  g(\alpha) \not=0)

と表される.  \alpha が零点集合内の集積点なので, 零点からなる点列  \{a_n\} \subset \mathfrak{D_{\alpha}} \forall n, a_n \not=\alpha かつ  \displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n=\alpha となるものが取れる. するとこのとき

 (a_n-\alpha)^kg(a_n)=f(a_n)=0

であるから  g(a_n)=0 となり,  n \to \infty g(\alpha)=0 となる. しかしこれは  g(s) の定め方から矛盾である. (終)

 

この一致の定理は 久保田-Leopoldt による p L 関数の構成などに使われます.  p L 関数の構成にはほかに岩澤によるStickelberger 元を用いた代数的な構成などがあります.

 

何か間違いなどあれば教えてください.

 

[参考文献]