ガランガラのブログ

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初学者向け群論解説 その5 ~巡回群~

ここでは巡回群についてまとめたいと思います. 前回 「部分集合が生成する部分群」 というものをまとめました. 今回する巡回群の定義に必要になるので載せておきます.

 

mathgara.hatenablog.com

 

では早速定義から入りましょう.

 

定義 1.(巡回群) G が 巡回群 であるとは, ある元  g \in G が存在して, 任意の  G の元  x x = g^n (n \in \mathbb{Z}) と表せることをいう. これは, ある元  g \in G が存在して  G=\langle g \rangle=\{ g^n \mid n \in \mathbb{Z} \} となることと同じである.

 

巡回群は生成元が  1 つであるという意味で, 群の中ではとても単純な群になっています.

 

では, 例を見ていこうと思うのですが, 一つだけ注意があって, それは名前の「巡回」という部分にとらわれすぎないようにしてほしいということです. 例の中で巡回してるとはみえない例も出します. 僕はどっちかというと 「単項生成群」などどいったほうが変な誤解を生まずに済むのではないかとすら思います. また  g^n というのはあくまで 演算を繰り返す というだけの意味なので, 普通の掛け算とは関係ありません. 

 

例.   n自然数として,  1 n 乗根全体  G=\{ e^{\frac{2 \pi ik}{n}} \in \mathbb{C} \mid 0 \leq k \leq n-1 \} は乗法に関して巡回群になる. なぜなら  g=e^{\frac{2 \pi i}{n}} を固定すると, 任意の  G の元  e^{\frac{2 \pi ik}{n}} g^k と書けるからである. よって  G= \langle e^{\frac{2 \pi i}{n}} \rangle となる. これはたしかに "巡回" っぽい感じがしますね.

ちなみに, ある群が巡回群であることを示すときは, このように  G生成元と思われるものをしっかり具体的に明記して, それが実際生成元であることを示すことが必要です.  たとえば今回の場合に, 

 x \in G とすると,  1, x, x^2, \cdots ,x^{n-1} \in G より  G巡回群である

といったものなどは何も生成元が証明で与えられていませんので誤った証明です. 

 

例.   \mathbb{Z} は加法を演算として巡回群である. より詳しく言うと  \mathbb{Z}=\langle 1\rangle (=\langle -1 \rangle) である. なぜなら任意の整数  n 1^n=1+1+ \cdot + 1 と書けるからである. ここで  n が負の整数のとき, たとえば  -2 などに対しては  1^{-2}=(1^{-1})^2=(-1)+(-1) ということである. このようにこれはあまり "巡回" という感じはしませんが巡回群になっています.

 

巡回群に関して次の簡単な性質があります.

 

命題 2. 巡回群は可換群である.

証明  G巡回群なら, ある  g \in G が存在して  G= \{ g^n \mid n \in \mathbb{Z} \} であり,  g^i, g^j \in G に対して, 

 g^i \cdot g^j=g^{i+j}=g^j \cdot g^i

より可換群になる. (終) 

 

もちろん, この命題の逆は成り立ちません. 反例は  \mathbb{Q} などは加法に関して可換群ですが巡回群ではありません. なぜなら, 任意の有理数  \dfrac{m}{n}, (n \in \mathbb{N}) に対して,  \dfrac{1}{n+1} \left( \dfrac{m}{n} \right)^k=\dfrac{km}{n} のかたちで表せないからです. 

 

今回はここまでとします

 

何か間違いなどあれば教えてください

 

[参考文献]