ガランガラのブログ

数学や好きな音楽について書くことが多いです。

A → S^-1A が単射でない例

ここでは, 可換環  A とその積閉集合  S に対して次の環準同型写像

 f : A \to S^{-1}A ; x \mapsto x/1

単射でない例を紹介したいと思います.

僕はこれをアティマクではじめて読んだときとても戸惑ったのを覚えています.

なんで?ってなりますよね.

ということで少しずつ考えていきます.

 

まず, 環準同型が単射でないということは,  \textrm{Ker}(f) \not= \{0\} ということと同値です.

ここで  a \in A に対して  f(a)=a/1=0 とはどういうことかをまずは考えてみましょう.

これは局所化の定義から

 \exists s \in S, \ \textrm{s. t.}\ as=0

ということになります.  a/1=as/s=0/s=0 ってことです. ということは

もともと  0 ではないけど, うまく  S の元をかけると  0 になる元が存在するように可換環  A とその積閉集合  S を定めればいいというのが方針として立つと思います. 明らかにわかるのが 可換環  A が整域だと上のような環準同型  f は必ず単射になるということです.

というわけで, 整域以外で考えていきます. 

すると次のような例があります.

命題 1.  A= \mathbb{Z}/{6 \mathbb{Z}},\ S=\{1, 2, 4 \} とすると環準同型  f : A \to S^{-1}A\ ;\ x \mapsto x/1単射でない.

証明  \textrm{Ker}(f) = \{ 0, 3\} がわかる. (終)

 

何か間違いなどあれば教えてください.

 

[参考文献]