初学者向け群論解説 その13 ~正規部分群の定義と例~
前回はラグランジュの定理など有限群やその剰余類の位数についてまとめました.
今回は群論においてとても大事で基本的な正規部分群の定義と例についてまとめたいと思います.
以前まで、群 とその部分群 に対して
という剰余類の集合を考えていました。今回扱う正規部分群というのはこの剰余類の集合が, もとの群 の演算により自然に群になるような部分群のことをいいます.
まあ, 定義を見てみましょう.
定義 1.(正規部分群) 群 の部分群 が
を満たすとき の正規部分群といい, とかく.
またこれは
とみてもいいです. 本によりいろんな形の定義の書き方があるかと思います.
定義からまず次のことがすぐにわかります.
命題 2. が 群なら任意の部分群は正規部分群である.
証明 を任意の部分群とする. 任意の に対して
より は正規部分群である. (終)
また自明な部分群も正規部分群になります.
他にも正規部分群の例を見ていくために, 次の命題も示しておきましょう. とても大事な命題です.
命題 3.( は正規部分群) 群 とその間の群準同型写像 に対して, は の正規部分群である.
証明 まず, が部分群になることは以前示した. 任意の に対して となることがいいたいのでこの元を で送ってみると
より となる. (終)
では正規部分群の例を見ていきましょう.
例 1. 行列式をとる写像 は全射準同型であり, であり, となる.
さて, ある部分集合によって生成された部分群が正規部分群かどうかの判定には次の命題が有効です. 証明は煩雑なので省略します.
命題 4. は群 の部分群で, はそれぞれ部分集合 によって生成されているとする. このとき, すべての に対して なら は正規部分群である. が有限群なら だけで十分である.
さて, この命題について, が無限群で しか成り立たないときに正規部分群にはならないような例を紹介しておきます.
命題 5. とする. とすると であるが, となる.
今回はこんなかんじで.
何か間違いなどあれば教えてください.
[参考文献]