ガランガラのブログ

数学や好きな音楽について書くことが多いです。

相対位相

今回は, 今では「定義通り考えればいいやん」って思うんですが, 当時初めて勉強した時はなんやかんや理解するのに時間がかかった"相対位相"について, 過去の初学者だった自分に伝えるような感じでまとめたいと思います. より具体的には

Euclid 空間  \mathbb{R} の部分集合  I=[0, 1) に相対位相を入れて  I位相空間とみなすとき,  [0, 1/2 ) \subset I I の開集合である

ということが腑に落ちないような方が対象です.  なんか, 講義が Euclid 空間から始まって位相空間に入っていくというような流れの場合に開集合と開区間がごっちゃになる人を割と見かけますし, 自分も混乱しました. (こういう混乱があったからちゃんと理解できたかなとも思いますけど)

 

では定義などを述べていきます.

 

定義 1.  (X, \mathcal{O})位相空間とする.  M \subset X に対して定まる相対位相  \mathcal{O}_{M} とは

 \mathcal{O}_{M}=\{U \cap M \mid U \in \mathcal{O} \}

である. すなわち 部分集合  M X の開集合  U \in \mathcal{O} の交わりとしてかけるものを開集合とする.

 

例 1. まずは有限集合で具体例をみましょう. (位相やり始めの時は有限集合, 無限集合それぞれで具体例を考えるようにすると学びやすい気がします.)

 X=\{1, 2, 3 \}, \mathcal{O}=\{ \emptyset, \{1\}, \{2, 3\}, X \} とし,  M=\{1, 2 \} \subset X とします. このとき相対位相はどうなるでしょうか. 丁寧に  \mathcal{O} の要素と  M との共通部分を考えると

 \mathcal{O}_{M}=\{ \emptyset \cap M, \{1\} \cap M, \{2, 3\} \cap M, X \cap M \}=\{ \emptyset, \{1\}, \{2\}, M \}

となることがわかると思います. ここでたとえば  \{2\} X では開集合ではない( \mathcal{O} の要素ではない)が,  M の開集合ではあるということに気づくかと思います.  

 

例 2. 次は冒頭で述べた例についてみていきましょう. 最初は違和感を抱くかもしれないですが, 特にこういう抽象的な分野の勉強では "定義通り考える"ことをまずは身に着けてください. (たとえば集合の合併や共通部分の演算公式をベン図を使わず定義通り数式で示したりするのは最初はとても大事だと思います)  では, 

Euclid 空間  \mathbb{R} の部分集合  I=[0, 1) に相対位相を入れて  I位相空間とみなすとき,  [0, 1/2 ) \subset I I の開集合である

の証明をしてみましょう. これを示すには

 \mathbb{R} の開集合  U U \cap I=[0, 1/2 ) 

となるものをひとつ具体的に挙げればいいです. たとえば

 U_{1}=(-1, 1/2) \subset \mathbb{R}

とすれば, これは条件を満たします. 他にも

 U_{2}=(-1, 1/2) \cup (2, 3) \subset \mathbb{R}

みたいなものでもいいです. (これは開区間ではない  \mathbb{R} の開集合です)

 

また, 相対位相のひとつの見方として連続写像を用いた次のようなものもあります.

 

命題 2.  (X, \mathcal{O})位相空間とする.  M \subset X に対して定まる相対位相  \mathcal{O}_{M} とは, 包含写像

 \iota : M \hookrightarrow X

を連続にする最弱の位相である.

 

証明はしませんが  U \subset X に関して, 逆像が  \iota^{-1}(U)=M \cap U になることからわかります.

 

ではこれくらいで終わろうと思います.

 

何か間違いなどあれば教えてください.

 

[参考文献]