ガランガラのブログ

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整従属性が剰余環や商環に遺伝する

ここでは、整従属性が剰余環や商環に移っても保存されることを紹介します.

一応整従属について定義を確認します.

 

定義 1.  A \subset B を環の拡大とする. このとき  x \in B はある  A 係数のモニック多項式の根であるとき  A 上整という.  B の任意の元が  A 上整であるとき  B A 上整という.

 

 (1)  \mathbb{Z} \subset \mathbb{Q} において整数はすべて  \mathbb{Z} 上整であるが  x=\dfrac{1}{2} \mathbb{Z} 上整ではない.

 (2)  \mathbb{Z} \subset \mathbb{Q}(\sqrt{-1}) において \mathbb{Z} 上整である元全体は  \mathbb{Z}[ \sqrt{-1} ] である.

 

このような整従属性が剰余環や商環に移っても保存されることを示します.

 

命題 2.  A \subset B を環とし,  B A 上整とするとき次が成り立つ.

 (1)  \mathfrak{b} Bイデアルとすると  B/ \mathfrak{b} A/(A \cap \mathfrak{b}) 上整である.

 (2)  S A の積閉集合とすると  S^{-1}B S^{-1}A 上整である.

 

証明 

 (1) について: \bar{x} \in B/\mathfrak{b} をとる. このとき  x A

整なのである  A 係数のモニック多項式の根となるので  a_i \in A として  x^n+a_1x^{n-1}+ \cdots + a_n=0 となる. この式を  B/ \mathfrak{b} で考えれば  \bar{x} を根にもつ  A/(A \cap \mathfrak{b}) 係数のモニック多項式を得るのでOK.

 (2) について: x/s \in S^{-1}B を任意にとる. このとき上の時と同様に

 (x/s)^n+(a_1/s)(x/s)^{n-1}+ \cdots + a_n/s=0

となりOK. (終)

 

何か間違いなどあれば教えてください.

 

[参考文献]