ガランガラのブログ

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整拡大における極大イデアル

今回は整拡大における極大イデアルの性質を紹介します.

 

補題 1.  A \subset B を整域かつ整拡大とする. このとき

 A が体である  \Longleftrightarrow B が体である.

証明 

[ \Longrightarrow について]

 y \in B \setminus \{0 \} とする. このとき最小次数をもつ整従属関係式を

 y^n+a_1y^{n-1}+ \cdots + a_n=0 , (a_i \in A)

とする. このとき最小次数で  B が整域なので  a_n \not=0 である. よって

 y^{-1}=-a_n^{-1}(y^{n-1}+a_1y^{n-2}+ \cdots + a_{n-1}) \in B

となり  B は体である.

[  \Longleftarrow について]

 x \in A \setminus \{0 \} をとる.  B は体であるので  x^{-1} \in B であり,  A 上整なので整従属関係式

 (x^{-1})^n+a_1(x^{-1})^{n-1}+ \cdots + a_n=0, (a_i \in A)

が存在する. すると

 x^{-1}=-(a_1+ \cdots + a_n x^{n-1}) \in A

となり  A は体である. (終)

 

また整従属性は剰余環に移っても保たれます. 証明は次の記事にあります.

mathgara.hatenablog.com

 

では今回のメインの命題を紹介します.

 

命題 2.  A \subset B を整拡大とし,  \mathfrak{q} B の素イデアルとする.  \mathfrak{p} := A \cap \mathfrak{q} とするとき

 \mathfrak{q} が極大イデアル  \Longleftrightarrow \mathfrak{p} が極大イデアル.

証明 剰余環に移っても整従属性が保たれるので  A/ \mathfrak{p} \subset B/ \mathfrak{q} は整域の整拡大である. 補題1 を用いると

 \mathfrak{q} が極大イデアル  \Longleftrightarrow B/ \mathfrak{q} が体  \Longleftrightarrow A/ \mathfrak{p} が体  \Longleftrightarrow \mathfrak{p} が極大イデアル

より主張が成り立つ. (終)

 

何か間違いなどあれば教えてください.

 

[参考文献]