ガランガラのブログ

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射影加群だが自由加群でない例

ここでは「射影加群だが自由加群でない例」を挙げたいと思います.

まずは, 自由加群はいいとして, 射影加群の定義を確認します.

 

定義 1. (射影加群)  R を環とする. このとき, 左  R 加群  P射影加群 であるとは, 任意の左  R 加群全射準同型  f : M \to N と任意の左  R 加群の準同型  g : P \to N に対し, 左  R 加群の準同型  h : P \to M f \circ h = g を満たすものが存在することをいう.

 

これは関手  {\rm Hom}(P, - ) が完全であることと同値です.

射影加群に関して次のような性質があります.

 

命題 2.  \Lambda を集合,  (P_\lambda)_{\lambda \in \Lambda} を左  R 加群の族とするとき

すべての  \lambda に関して  P_\lambda が射影加群  \Longleftrightarrow \displaystyle \bigoplus_{\lambda \in \Lambda} P_{\lambda} が射影加群

また, 環  R は左  R 加群として射影加群であり, よって任意の自由  R 加群は射影加群である.

 

ここではこの命題の最後の部分に関しての逆の反例を挙げたいと思います. 実は R {\rm PID} ならば  R 加群 P が射影加群であることと自由加群であることは同値になるので,  R {\rm PID} 以外で考えて, うまく左  R 加群を定めないといけないということになります.

 

命題 3.  R=\mathbb{Z}/6\mathbb{Z} とする. このとき  P=\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} は射影加群であるが自由加群でない.

 

証明  R \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \bigoplus \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} であることから射影加群であることはわかる. 自由加群でないことは自由加群なら少なくとも元の個数が  6 以上になることからわかる. (終)

 

何か間違いなどあれば教えてください

 

[参考文献]