N/C Theorem
今回は群論の Theorem について簡単にまとめたいと思います.
はNormalizer, はCentralizer のことです. まずはこれから使う概念の定義を簡単にまとめます.
定義 1. を群 の部分群とする.
- を の正規化群(normalizer)という.
- を の中心化群(centralizer) という.
- を群 の中心という.
(余談ですが中心でZが使われるのは, ドイツ語の「Zentrum」からきているみたいです)
これらはすべて群 の部分群になります. また, 定義からすぐわかることとして
- 中心化群は と可換なものが取り出されている.
- がアーベル群
などがあると思います. また中心に関しては 群の中心は単位群でないということも有名だと思います. (この事実は 群に関する命題を帰納法を使って示すときなどに便利だなと思っています)
自己同型群などに関しても定義していきます.
定義 2. を群とする.
- を の自己同型群という.
- に対して を と定義し, 内部自己同型という.
- を内部自己同型群という.
簡単にわかることとして に対して
などがあります. この事実はすぐ後に使います. では準備が長くなりましたが本題に入りたいと思います. 次のような写像を考えます.
この写像が群準同型写像になること, 像が になること, そして核が中心 になることが簡単に確認できます. よって準同型定理から
が従います. ここで本題の Theorem とは何かというと, これを のところを任意の部分群 にして少し一般化したような定理です.
定理3. (N/C Theorem)
を群 の部分群とする. このとき
は well-defined で
この定理で としたときにその前に述べた主張になることがわかると思います.
部分群 が正規部分群でない場合には に対して, とはならないので, 写像 が定義される( が の元になる)ように定義域が正規化群に修正されています. 核として の元と可換な の元が取り出されています. また似たようなこととして次のことも成り立ちます.
命題4.
を群 の部分群, とする. このとき
は well-defined で
このときの核は の元と可換な の元が取り出されています. このことから命題4. の設定の下で,
と が可換
などが成り立つことがわかります. 有限群での議論だと, の位数が の位数と の位数の公約数になるということが利用できて便利だと思います. 実際京都大学の平成30年度の院試の専門の問題はこのことを使う解法があります. 面白いのでぜひ解いてみてください.
何か間違いや改善点などがあれば教えてください. (定理とか囲えるようになりたい)
[参考文献]